母の喜び、母の覚悟、
私は、満州の引き揚げ者のそれぞれに配偶者と死別した者同士の母と父が再婚して、戦後生まれた。
私は長男で、両親に可愛いがられて育った。
私が東京の大学に入学した時、大学の合格発表を九州の家で聞いたときの母の表情を、私はまざまざと覚えている。
母はもう、私が大学に入って上京することは、親子が一緒に住めなくなること、人生の節目の別れになることは十分にわかっていた。
母にとって、どんなに淋しくつらかったかと今はわかる。でも、私の大学の合格通知を知った時のあの喜びは、自分の淋しさを超えていた。
あの時に見た、母の喜びの表情は、今も私の人生の道しるべ。
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