漁港の岸壁、フグの子供を助ける、
年末に私が初めて訪れた対馬は、釜山から50キロも無いほど韓国に近い島だった。
厳原(いずはら)港の岸壁の係留策を留めるコンクリートの丸い杭(確かボラードとか云う)に腰かけ、暫く夕暮れの漁港を眺めていた。
岸壁の端に、突然、小さな何か魚らしいものが跳ねるのが見えて、私は、近寄ってみたら、それは、フグの子供だった。岸壁の上に、誰か捨てて行ったのだろう、陸上で苦しそうに横たわっていた。
私は、尻尾をそっと掴んで、海にポチャーンと投げこんでやったら、何と、メチャクチャ元気に、海の中に泳いで消えて行った。
その元気な泳ぎぶりに、ビックリしたが、何とも、助け甲斐のある、フグの子供だった。
写真に撮っておけば好かったなーとも、後で、そのことは、少し残念に想った。 それでも、フグが横たわっていた岸壁の写真を撮って、その光景の想い出とした。
ただ、それだけのことなのに、旅の強烈な、心地よい想い出となった。
1274年文永の役、1281年弘安の役で、蒙古軍に、島民が大量虐殺された対馬、壱岐。
私と云う旅人が、誰もいない対馬の漁港の岸壁で、一匹の小さなフグを救った話、これも旅の安らぎであった。