故郷の裏山、不動明王のいる小さな広場、
九州の故郷の裏山に、昔から、不動明王を祭る小さな広場があった。今では、その広場は更に小さくなり、住宅が建ってしまったが、その当時の不動明王は、まだ、その小さな敷地の中で、同じ表情で立っている。その場所は、昔から、"不動山"(ふどさん)と呼ばれていた。
今でも、その不動明王の表情を見ると、幼児の頃の私を想い出す。 当時の私にとっては、怖い顔に見えたが、今では、私を労ってくれている様な、優しささえも感じる。 当時の、元気な両親の声も想い出させてくれる。
今回の年末の帰省の時、その不動明王の写真を撮りに、裏山に登ったら、母と親友だったおばさんの息子さんが、家の外に出ていて、私は、思わず、「節生さんですね」と、声をかけた。「あぁ、ひろちゃん、、、、、」。 その息子さんは、年は10才位上だが、お互いに顔はよく覚えていた。
母どうしが親友だった、息子どうしが、今度は、同じ裏山の不動山で、夕暮れに、話に花が咲く姿、こんな穏やかなシーンを、私は、今迄、想像だにしなかった。
暫く、まるでお互いの母親が会話しているかの様な、安らいだ言葉のやりとりに、ほんのりとした。
横浜に帰ってから、その不動山と節生さんの写真を見る度に、母親達と4人で、そこにいる様な気がする。