カールブッセの詩、幸せは何処に、
満洲から引き揚げて来られて、苦学して、九州の高校で国語の先生をしておられた先輩の手記にあった"幸せ"に対する気づきの話に感動した。
学校で、「山のあなたの空遠く、"幸"住むと人の云う。 ああ我 人と尋めゆきて 涙さしぐみ帰り来ぬ。 山のあなたはなお遠く "幸"住むと人の云う。」このカールブッセの詩は、学校で教えられても、幸せが何か、中々わからない詩だったが、ハッと気づく井上靖の本があったと云う。
山村のキャンプ場近くに住む老人が、キャンプに来る若者に親切にしていたら、ある時、キャンプファイヤーに加わらないか誘われ、雑談を愉しんでいる時、若者から、「幸福とは何ですか?」と問われる。
老人は、「最後に息を引き取る時、ああ俺の一生は幸せだったなぁと云える人が幸福な人だと思います」と答えたと云う。 そのことを、国語教師として、いつも、カールブッセの詩に、つけ加えて話をしていたとのこと。
そして、国語教師を退職後、"幸"の文字の意味に気づき、新たな幸せの意味を、手記の中で語っておられる。
"幸"の上の部分は土である。下の部分は、草や木が芽を出しかけた形。 二葉と次に出る二つの本葉を表し、下の十の部分は、下へ伸びる根を表している。
草や木が、固い土を破って、今、まさに芽を出そうとしている姿が「幸」と云う文字なのだと云う。
私も、カールブッセの詩に惹かれながらも、意味がわからず生きて来て、先輩の手記を読んで、落ち着いた気持ちになれた。幸せについて語る言葉が、もう、幸せの輪郭を、はっきり映しだして下さってると想った。
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