塔 和子さんの詩、
先日の沢知恵さんのコンサートで、ハンセン病だった塔和子さんの詩の存在を知った。
13才で、ハンセン病になられ、瀬戸内海の島の療養所に隔離されて生きて来られた塔和子さんの詩は、昨日知ったばかりなのに、私の心に、大きな衝撃を残した。
「煮ているおかずの匂い やかんの尻をなめるいろりの炎 むぎわら帽子の中の野苺のかがやき なげだされた野良着の暖かいしみ 畑のでき具合を母に話している父の声 まきをくべながらきいている母の姿
近所の子供と遊んでいる 弟妹のはずんだ声を 少しずつすこしずつ包んでゆく暮色 みかん色のはだか電球 この家はいつまでもあり この暮らしは永遠につづいてゆくのだと信じていた 少女の日のまるい心
療園のくらしに どうしようもなくかわき ひびわれ とげだつとき それらは 胸の奥で乳のようにうるんで なめらかに私を包む 私はその優しいものを ひりひりとしみる傷口にこころゆくまでしみこませて やっと安らぐ血のふるさとにうえかわく 一匹の羊」
人生は、こんなにも、過酷なことかと想った。 生きることの凄まじさを想った。
「人間がこんなにも哀しいのに、主よ、海が余りにも碧いのです」、遠藤周作の碑の言葉を想い出す。
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