九州・早朝5時からでもクマ蝉の大合唱、お経の響きにも似て、
真夏、九州・大牟田の街は、早朝、5時くらいからでも、クマ蝉が、ワシワシワシと、割れんばかりの大声で鳴いていた。 それは、子供時代から慣れ親しんで来た夏の音だから、私には、心地好かった。 それは、何としたことか、仏教の大本山の伽藍に響く読経の音ににも似て、心休まる想いだった。
クマ蝉は、羽が透明で、腹がオレンジ色、木の高い場所を好み、素早くて、身体全体を力強く震わせて鳴く。昔、竹竿を持った蝉取り名人の私が、一番、取りたくて狙っていた蝉だった。
今でも、私は、クマ蝉の声に、すぐ反応して、クマ蝉が鳴くと、その鳴いてる木の上の方の枝を見上げる。
今回の大牟田帰省の時、偶然弱ったクマ蝉が実家の駐車場付近に落ちていて、すぐ拾い上げた。まだ生きていて、手でクマ蝉を触ると、何か、勝利感の様な高揚した気持ちが蘇った。 腹のエラの部分のオレンジ色が、エルメス色で、何か品位がある。
もうすぐ死んでしまうだろうから、そのクマ蝉を横浜まで持ちかえり、家の庭に埋葬ししようかとか想い、ペーパーバックの中に仕舞って一夜を明かした。
すると、翌朝、ペーパーバックからごそごそと力強い音がし、見ると、クマ蝉が動いていた。 もしや、元気を取り戻したのではと思い、外ヘ出て、飛ばせてみたら、弱々しいながら低く飛べたので、又自然に返してやろうと思い、そーっと木の枝に、留まらせてあげた。
父の23回忌の法事で帰省した大牟田、そんなクマ蝉との出会いがあった2013年盛夏。
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