褐色の"めかぶ"、熱すると鮮やかな緑、海はふるさと、
濃い褐色の"めかぶ"(昆布)が、熱すると鮮やかな緑になることは驚いた。炒めても、茹でても、"めかぶ"は同じ緑色になった。私は、それだけでも、新鮮な驚きだった。
そして、食した時、私の中に心地よい海の香りが一杯に広がった。まるで、海岸の岩場でも歩いているような、大自然の海らしい香りだった。それは、また、人間も海の生物から進化して来たことを確信するような安らぎでもあった。「私も、太古の昔は魚だったなー」、とも想った。
母の実家、長崎の外海に面した畝刈(あぜかり)の砂浜を、引っ込み思案の内向的な小学生の私を連れて歩く母子の姿まで想像する。 脱皮した後の小さな、軟らかい蟹を見付けて、びっくりして母に訊ねた想い出。その時、その場に一杯に溢れていた海の香り。
心にも遺産がある。心にも図書館がある。
スーパーで、何気なく興味を示して買って試た"めかぶ"、それは、ふるさとへの切符みたいな存在に想えた。
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