行ってみたい村、長野県・下伊那郡・平谷村
終戦後、満洲から子供を亡くして、単身引き揚げて来た母が向ったのは、終戦直前に結核で、長野県の療養所に送られ、死の床にあった夫のもとへの報告であった。
母の実家・長崎から、席も無いまま、汽車を乗り継いで、何昼夜もかけて長野へ向ったと聞いた。亡くなった夫は、子供が亡くなったことを病床で聞き、悲嘆にくれたことだろうと思う。そして、二人で大泣きをしたことだろうと思う。
「長野県・下伊那郡・平谷村」、数日前に、電話で、母の死別した前夫の親戚の方から、その実家の場所を初めて教えて貰った。
「長野県・下伊那郡・平谷村」。インターネットで調べてみると、長野県で一番小さな自治体で、人口544人とあった。長野県の南西端に位置し、岐阜県に接する標高1500m前後の山々に囲まれた山村、冬は-10度を下回ると云う。山村なのに漁協があるのが不思議だった。それは渓流釣りの漁協とのこと。
高峰山(1574m)からの村の眺望や、山々、畑、川など、平谷村の写真を、母が見たであろう光景を、しげしげと眺めた。
母が悲嘆に暮れて、泣きながら目指した村、泣きながら去った村、それが平谷村。
地図で調べながら、母の人生を想う。
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