最近インターネットの記事で、"命をつないだ10円玉"の話に、心が揺さぶられた。「虐待を越えてタエコの40年」とか手記を書かれている島田妙子さんの兄妹の話が載っていた。小学2年~中学2年まで、義母と父から、一つ違いの兄と共に、虐待を受けて、恩師に助けられた話であった。
中学の担任の先生が、身体の傷から、虐待に気づき、「もうあかんと思ったら、電話してくるんやで、」と云って渡してくれた10円玉が10枚。
パチンコにはまっていた義母が家の金40万円持ち出し、父と口論になった時、自分に罪を擦り付けて、遂にその日がやって来た。家を飛び出し、先生の家の方角を目指していたと云う。先生に教えて貰った電話番号に電話した時、辺りは真っ暗だったと云う。「もしもし」と言ったっきり言葉が出ない。「今、どこや」と勢い込む先生。その日は、先生の家に泊めて貰い、フカフカのベッドに「お嬢様」になったような気持になりながら、寝付けなかったと云う。
それから、児童相談所へ行き、虐待の生活とは決別したと云う。中学卒業後、工場勤務を経て、22歳で結婚、今では、映像製作会社の社長をしていると云う島田妙子さん。
一緒に虐待されていたお兄さんと一緒に家出して、二人ですすったインスタントラーメンの想い出。お兄さんはその後、白血病で亡くなられた時、妹へと手紙が見つかったと云う。「全然兄貴らしいことしてやれなくゴメンよ。妙子には、本当にいつもパワーを貰いました。妹やけど、お前のこと、心から尊敬しています。今までありがとう」と書いてあったと云う。
色んなことが織り成す人生模様と、感動の輝き。ちっぽけな10円玉は、その象徴のように想う。以前聴いたことがある。お母さんと逢いたい子供にとって、500円や1000円札より、公衆電話からお母さんに電話出来る10円玉が、どれだけ価値があるか。その子供の気持が、私は痛い程わかる。10円玉には、優しさが一杯詰っている。そして、お金の価値を、逆転させてくれる魔法ももっている10円玉。