「子グマのエペレ」の物語
6人兄弟・姉妹だった私の子供時代には、家で語り継がれて、泣かされて来た物語があった。クマの親子が野に遊んでいた時、母クマが猟師に銃で撃たれ、母と子の別れのシーンを描いた物語りであった。
姉や母から聞かされて、私も、私の妹も弟も、みんな子供ながらに泣きながら話を聴いていた。
母クマは子グマに云う。「お母さんは、もうダメだから、早く逃げなさい。一人になっても、元気に生きなさい。」そう云って、子グマに云い聞かせる母グマのシーンが、辛くて辛くて、心の中はいつもオイオイ泣いた。妹や弟は、鼻をヒクヒクさせて、泣いた。
その話をよくしてくれた3番目の姉は29歳の若さで、幼子を残して、ガンで亡くなった。「子グマのエペレ」、その話は、その後、どこにも、誰からも聞くことは無かった。「子グマのエペレ」、何かアイヌっぽい響きの名前にも感じる。私の子供時代に、強烈な印象を残した「子グマのエペレの物語」
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