命の恩人
父の満洲引き揚げ体験の中で出て来る袁さんと云う人は、父達家族の危険な引き揚げの時、神様のように手助けをしてくれた中国の人。父の遺稿・満洲脱出記に名前が出て来る人。
私の命の恩人と思う人は、実は、アラブ人のアル・アワデイーさん。私の再就職の時、スムーズに石油業界に再度復帰出来たのも、彼のおかげだった。初めて、会った時、彼の笑顔、話をした時に彼の横顔に、私は母の優しさを想い出した。亡くなった母が私を助けに来たのだと思った。彼はもう、アラブに帰任してしまったが、私の人生の危機を救ってくれた。
そのような母の恩人は、父だったと思う。夫、子供を病気や引き揚げの前後に亡くし、呆然としている中、光を与えてくれたのが、やはり配偶者を亡くした父だった。父は、母が、もう一度、生きようと云う気持ちを起こさせてくれた人だったろうと思う。母は父が亡くなった時に云っていたと云う。この人と一緒になって良かったと。
そして、もう一人、母にとっての命の恩人がいた。それは、再婚して初めて生まれた「私」だったかもしれない。
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