長男
私の母は、十年以上前に亡くなっているが、生前、子宮ガンを患ったことがある。ガンとストレスの関係で、母のストレスのことが、ずっと気になっていた。満洲引き揚げのことや、戦後の生活の苦労などを漠然と思っていた。
数日前に、小田原の妹と二人で、横浜で食事をした時に、妹が、長男でもなかった父が、子供の頃、祖父・祖母を引き取って同居したことが、口には出さずにも、大きなストレスになっていたとのことを初めて聴いた。
子供時代、6人兄弟・姉妹の家に、祖母・祖父が同居し始めた時のことは、微かに覚えている。子供の頃、毎日、二階に食事を運んだことも覚えている。文房具店や、貸本屋を営みながら、一家総出で働きながら、母の心は、パニックになることも多かったであろうことが、今は、痛いほど分かる。
ただ、小さかった私が、「長男で良かった。母ちゃんを面倒みれるから」と云ったことが、母は、痛く嬉しく、何度も、人の前で、そう云っていた。結局は、地元に残された弟夫婦が両親をみてくれた。 「長男」の響きは、遠い昔の家族の情景を想い出させる。
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