喜びと哀しみの子供の巣立ち
私が九州の実家で、大学の合格通知電報を受けた時の母のその瞬間の笑顔は、一生忘れられない。
母は、私が大学に進学すれば、もう一生、一緒に住むことはなくなることを感じ、息子との哀しい別れになることを感じていたと思う。私は、東京の大学を複数受験し、地元九州の大学は受けなかった。
息子が夢に向かって旅だって欲しいと思う気持ちと、哀しい別れを同時に感じていたはずだとわかる。合格の電報を貰った時の、その瞬間の喜びは、私自身の喜びの何十倍も母が喜んだように感じた。それは、完璧に私自身の人生を思って、自分自身が合格したかのように、私自身になり切って喜んだ表情だった。
その時の母の気持ちは、私が母自身になりきったかのように、今の私はわかる。私との別れが、どんなに哀しい別れだっただろうと。それでも、息子の選んだ道を送り出す母の覚悟がわかる。
私は最近、不図、その時の母の気持ちになりきるように感じる時がある。人生の喜びと哀しみの同居する感情を味わう時がある。
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